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大阪地方裁判所 昭和41年(行ウ)13号 判決 1968年6月24日

原告 桜井雄次郎

被告 大阪国税局長 外一名

訴訟代理人 氏原瑞穂 外三名

主文

本件各訴を却下する。

訴訟費用は被告署長の負担とする。

事  実 <省略>

理由

被告署長が昭和四三年五月七日付で、原告の昭和三八年分の所得税につき、原告の申告どおりの減額更正処分(第二次更正処分)をなし、その頃原告に通知したことは当事者間に争がない。

ところで、本訴において原告は、被告署長が昭和三九年一〇月七日付でなした原告の昭和三八年度の所得税の更正処分(第一次更正処分、所得金額金六一四、七四六円としたもの)のうち、申告所得額金三三五、〇〇〇円を超える部分の取消と、被告局長が昭和四〇年一一月一八日付をもつてなした右第一次更正処分に対する審査請求を棄却した裁決の取消とを求めているのであるが、被告署長は前記のとおり昭和四三年五月七日付で原告の当該年度の所得税について原告の申告所得額を認める趣旨の再更正処分(第二次更生処分)をなしたのであるから、第一次更正処分(昭和三九年一〇月七日付)は第二次の更正処分によつて取消されたものと解すべくしたがつて、第一次の更正処分の取消を求める本件訴は、第二次の更正処分のなされた時以降、その利益を失うにいたつたものというべきである。なおまた第一次の更正処分に対する審査請求棄却の裁決の取消を求める訴も審査請求の前提たる第一次の更正処分が取消された以上、その利益を失うにいたつたものである。

以上のとおりであるから、原告の本件訴はいずれも訴の利益がないものとして却下すべきものとする。

訴訟費用の負担について考えるに、本訴が適法な不服申立手続を経て正当に提起されたことは当事者間に争のないところであり本訴提起当時は未だ第二次更生処分はなされておらず、従つて第一次更正処分の取消を求める本件訴も適法であつたところ、前記のとおり、本訴中(訴提起後約二年三ケ月を経て)に、被告署長によつて原告の申告額どおりの第二次更正処分がなされたため、本件訴が却下されるに至つたものであるから、本訴は第二次更正処分がなされた旨原告が陳述した昭和四三年五月二〇日の最終口頭弁論期日までは、その当時において原告の権利の伸張若くは防禦に必要であつた行為と認めるべく、他に特段の事情について主張立証のない本件においてはその訴訟費用は全て被告署長に負担せしめるべきものとし、民事訴訟法第九〇条後段を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 石崎甚八 仲江利政 光辻敦馬)

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